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 私が中体連軟式野球専門部委員長に就いてから4年の歳月が流れました。この4年間、実に様々な事がありました。猛暑による夏の大会での熱中症対策。部員数不足による合同チーム数の増加。そしてここ2年間の新型コロナウイルス感染症対策。目まぐるしく変わる現状に、私たち指導者だけでなく、選手や保護者も大変な思いをしたことと思います。

〇 部員数不足
 秋田県中体連野球専門部(以下専門部)では、県内9地区の軟式野球部員数を毎年調査しています。5年前の平成28年度には、全県で2600人いた部員も昨年度の令和3年度には2100人にまで減少しています。単純計算ですと、1年で100人ずつの減少ということになります。少子化の流れとしてはごく自然の事なのかもしれません。地区によっては減少率が異なるものの、ある地区では5年のうちに部員数が半減というところもあります。

〇 部員数不足解消のために
 この状況を、「少子化だから」と、黙って見ているわけにはいきません。専門部では、各地区でそれぞれに、部員数不足解消のための策を考えています。例えば、中学校の学区の小学校を招待した野球大会を開催したり、秋に中学生と小学生の合同練習会を開催したりして、中学校でも野球を続けるきっかけ作りを行っています。
 地道な活動の成果で、部員数が持ち直したり、未経験者の入部が増えたりするなど、うれしい報告がある反面、深刻な怪我のために野球を続けることができない小学生がいるという報告もあります。また、本当は野球を続けたいが、様々な事情で野球を続けることができない生徒がいることも残念でなりません
 部員数減少の原因が「中学校硬式野球チームへの流出では?」と聞かれることがあります。確かにそういった側面はあるかと思いますが、軟式野球は無くならないと思います。体が小さく、体力的に不安な生徒もいるでしょうし、練習場所までの距離や時間の心配を抱える家庭もあるでしょう。あくまで、選択するのは生徒たちであり、周りの大人ではないような気がします。中学校の部活動は教育の場であることを逸脱することなく、精進していきたいと専門部では考えています。侍ジャパン選出選手であっても、中学校軟式出身者は多いはずです。

〇 誰のための野球?
 ここからはあくまで私個人の考えですが、野球人口を増やすには、もっと私たち大人が変わらなければいけなのではないでしょうか?子供のための野球ではなく、私たち大人を満足させるための野球になっていませんか?昔は、子供たちがもっとのびのびと野球に取り組んでいたような気がします。勝つことはもちろん大切。しかし、私のスポ少時代の思い出は、練習の帰り道に友達とくだらない話をしたり、野球の帽子の中にホタルを入れて帰ったりした思い出です(笑)。野球が好きな仲間づくりが何よりも大切なのかもしれません。その仲間の輪が広がることが、野球人口の拡大や部員数不足解消につながるのではないでしょうか。

〇 新型コロナウイルス感染症対策
 ここ2年間、新型コロナウイルス感染症対策に悩まされていました。大会開催ができずに、最後の中総体が中止となった年もありました。生徒からは、なかなか練習ができずに、有り余ったパワーのやりどころに困っている様子も伺えました。東北、全国レベルの大会出場に向けて調整してきたものの、出場を辞退しなければならないこともありました。すべては身を守るためとは分かっていながらも、やりきれない思いでいっぱいだったのではないでしょうか。
 専門部の最大の事業でもある「夏の全県少年野球大会」もコロナ対策のために、様々な制限を設けさせて頂いております。出場選手をすべて集めての開会式は規模を縮小しています。観客も家族のみで、一般の方にはご遠慮いただいています。夏の風物詩の一つともなっているこの大会を、毎年楽しみにしておられた方々の気持ちを考えると胸が痛む思いです。
 早く事態が収束に向かい、従来通りの大会運営ができることを待ち望んでいます。

〇 最後に
 私にも2人の息子がおります。どちらも野球を続けておりますが、野球の指導者と保護者、そして専門委員長の3足の草鞋を履くのは容易ではありませんでした。幸い、私の周りにはこの私の現状を理解し、協力してくれる方々がたくさんおりました。しかし、そうではない状況の方々がたくさんいるような気がします。
 「子供に野球をやらせるのには、相当の覚悟が必要!」のままだと、子供の野球人口は増えません。この問題の解決こそが、野球人口減少を食い止める鍵の一つではないかと感じています。野球専門部を含め、保護者、地域、各種団体等がそれぞれの立場で負担軽減に努めていけたらと考えます。
 大リーグでの大谷翔平選手の活躍に刺激されたのか、雪解けが進んだ近所の公園には、いつもより多く、左バッターボックスに立つ小さな未来の大スター達の声が響いています。10年後、この子たちが安心して野球を楽しむことができる環境づくりを進めていきたいと思います。