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《2017年シーズンを振り返る》
「小学生、中学生、高校生、大学生、社会人と、それぞれが県内、東北大会において熱い試合を展開できたと思いますね」。
でも、全国大会においては「秋田県の野球の存在感を示す、というところまではいかなかったかな」とも。
大曲工高の藤井黎來(れいら)投手が育成枠で広島カープへの入団が決まり、秋田高専の石井大智投手が独立リーグに進むことが決まったように、年末にかけては明るい話題も飛び込んできた。
石井投手がプロを目指すきっかけとなったのは、中学校時代のチームメイトの成田翔投手(千葉ロッテマリーンズ)の活躍に刺激を受けたからだという。
「スター性を持った選手が現れると、ガラっと変わりますよね」とにこやかに言う。

《2018年シーズンへの期待》
「去年の秋季大会でも、高校野球を中心にレベルの高さがうかがえたように、今年も大いに期待できるでしょう」。
全国大会で県チームが活躍し、旋風を巻き起こすことができれば、県民の野球熱がもっと高まると考え、「そのためにも県野球協会としても最大限の努力をしていきますよ」。
秋田から県外へ出る選手がいれば、県外から秋田に来る選手もいるが、それについては「個人の将来を見据えての判断なので、それは尊重すべきだと思います。逆にそれがいい刺激にもなっていると感じますね」。
それでも県外の選手のほうが秋田県の選手に比べて“積極性”や“勝負に対するこだわり”が強いと感じているという。
お互いに刺激しあうことで更にいい試合ができ、県内全体が高まっていくと考えているという。
「秋田県の選手でも素晴らしい才能を持った選手がたくさんいるので、それを開花させるためにも指導者には頑張ってほしいですね」。

《2018年の協会の取り組み》
「まずは野球人口を増やすことですよね」。
2017年はティーボールの活動にも力を入れた。
スポーツが多様化していることや少子化の影響もあり、野球人口が減るのは当然のことでもあるが、入ってきた子供に指導するだけでは歯止めがかからない。
これからは“まだ野球を始めていない子供にどうやって関心をもたせるのか?”に焦点を当てていく必要がある。
「野球の本当の面白さを感じ始めることができるのは、小学校高学年になってからだと思うんです」。
“うまく打てる”、“上手に投げられる”、“正確に捕れる”、これらができるようになると楽しめるようになるが、低学年となるとそうはいかない。
でも、ティーボールは置いてある球を打つのだから、バットにボールが当たる喜びを感じることができ、点数も入りやすいので、低学年の子供でも楽しめるのがティーボールの良いところ。
「ティーボールをもっと広め、親子で関心を持ってもらえたらいいと思っています」。体験活動がもっと普及するように力を入れるという。
「あとは、これまで継続してきた『中学・高校一貫強化プロジェクト』への協力支援と審判員の募集にも力を注いでいかないといけないですね」。

《秋田県の軟式野球文化》
「これは他県にも誇れる文化」だという。
その背景には、“マスコミの力”が深く関わっていると分析する。
「県外から来た人が、秋田県の新聞を見て驚いていました。中学校の野球がこんなに大きく新聞に載るのか!と」。
マスコミに取り上げられることは選手たちにとってはうれしいことであり、モチベーションのアップにもつながる。
それが県の軟式野球が盛んな理由になっていると推測している。
「条件や家庭の事情、各々の考え方いろいろあるので、今まで築いた軟式野球の文化を守りつつ、リトルシニアなどの活動も応援していきたいと思っていますよ」。

《野球の魅力》
「最後まで結果がわからないところでしょうね。10点差をひっくり返すことだってできますからね。野球は筋書きのないドラマ、とも言いますからね。1つのミスで一気に流れが変わってしまったり、不可解なことがたくさん潜んでいたり、何が起こるかわからない面白さが魅力」だと語る。
「私自身、監督時代に起きた今でも忘れられないドラマがあるんですよ。」
経法大附属高校の監督に復帰した年(昭和57年)だった。夏の大会初戦での大曲工高との試合。
7回まで2-1で負けていて、吐き気、震え、冷や汗が止まらなかったほど、精神的に追い込まれていた。
しかし、8回の先頭打者のヒットで流れが変わった。後続が2長短打を連ねて一挙2点を返し、勝利を収めたのだった。
「あの1回戦はその後の決勝戦(優勝)よりも鮮明に覚えています」。
そしてもう一つ。
平成4年春季北東北大学野球(一部)優勝決定戦のこと。
富士大に4点差で負けていた9回裏、先頭打者の打球が風に流されて中堅手の前に落ちた。
そこから流れが変わり4点を奪い同点としたあと、延長11回サヨナラ勝利。
「神風が吹いた、と当時のマスコミにも大きく取り上げられましたね」。

《秋田県の野球》
「秋田県は野球熱が高いと思っています。
児童から高齢者まで、年代問わず楽しむことのできる生涯スポーツです。
この素晴らしさをどんどん伝えていきたいですね」。
学童野球から社会人野球までのほか、500歳野球など、“○○野球”がたくさんある。
野球は野球でもそれぞれ別物のように感じる人もいるようだが、「すべてひっくるめて“野球”ですから」。

《野球とは》
「心身や勘が鍛えられる場所ですね」。
野球をやってきて精神的にも肉体的にも鍛えられたおかげで、「大概のことではへこたれないと思っていますね」。

~編集後記~
穏やかな口調で、笑顔で話してくれた伊藤会長の表情からは、野球が大好きだということがひしひしと伝わってきた。
「(秋田県の野球を)もっと盛り上げていきたい」と何度も口にするのが印象的だった。
そしてそれを実現すべく、県野球協会の会長として着実に行動に移す姿は素晴らしいものだった。
きっと秋田の野球はもっと盛り上がるに違いない。

≪文・写真:ボールパーク秋田編集部≫

~ profile ~

伊藤 護朗(いとう ごろう)
昭和21年生まれ
秋田県秋田市出身
県野球協会会長
北東北大学野球連盟顧問
ノースアジア大学名誉教授
秋田経法大附属高校と秋田経法大の両方で野球部監督として全国大会(甲子園・神宮)に出場。